本記事では、アンダーソン・パークの経歴と活動を解説します。
気楽にお楽しみください。
Enjoy.
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1.アンダーソン・パークの経歴
アンダーソン・パークは、1986年2月8日生まれ、カリフォルニア州オクスナードの出身です。
本名はBrandon Paak Anderson。アフリカルーツのアメリカ人の父と、韓国ルーツの母との間に生まれました。
アンダーソン・パークは、教会でドラムを始めて、10代の頃、ベッドルームで楽曲制作を始めました。
過去には、マリファナファームで働いたり、ホームレスも経験しているそう。かなり貧困に苦しんだ過去があるようです。
それでも、どんな時も音楽は続けており、現在のバンドメンバー(The Free Nationals)は、マリファナファーム時代からの繋がりなんだとか。
とにかく、辞めずに音楽を続けたアンダーソン・パーク。まさに、継続は力なり。
そして、ヒップホップ界の重鎮ドクター・ドレーに見いだされ、瞬く間にグラミー受賞アーティストへと駆け上がり、今では名実ともにトップクラスのアーティストとなっています。
2021年には、ブルーノ・マーズと組んだ「シルク・ソニック」も話題になり、MTV MUSIC VIDEO AWARDSを受賞しています。下記が、受賞MVです。ルーサー・ヴァンドロスを彷彿とさせる極上R&Bに仕上がっています。
シルク・ソニックは、ソウルR&Bなど、アンダーソン・パークとブルーノ・マーズの趣味が合致したことで始まったコンセプチュアルなプロジェクト。ブルーノ・マーズは、プエルトリコ人と東欧系ユダヤ人をルーツに持つ父と、フィリピンがルーツの母との間に生まれており、アンダーソン・パークと同様に多様なバックグラウンドを持っています。そのためか、シルク・ソニックは、現代アメリカらしい多様性とリスペクトに対する意識が高い、高次元コラボレーション・プロジェクトとなっているように思います。ちなみに、シルク・ソニックの名付け親は、ブーツィー・コリンズ。
アンダーソン・パークの魅力はなんといっても、ハスキーでソウルフルで人懐こい声質。そして、心地よくグルーヴするドラミング。
なお、アンダーソン・パークは、下記のインタヴューのように、DIYや、YOLOの精神に基づいた人生観を持っており、諦めない人生のロールモデルとなっています。
特にヒップホップを志す女の子たちに言いたいけど、君たちが女であることを利用しようとするヤロウもいるだろうし、とにかく全部自分でやらなくちゃいけないから大変だと思うんだ。でも、自分でビートを作って、詩を書いて、歌って、レコーディングも全てできるようになれば、誰に頼る必要もない。いつか人を雇って仕事することになっても、誰に何も言われることなく夢を叶えることができるんだ。
http://www.highflyers.nu/special/andersonpaak_live/
では、ここからはアンダーソン・パークのアルバムを見ていきましょう!
2.1stアルバム
タイトル | Venice(ヴェニス) |
リリース | 2014年10月28日 |
レーベル | Empire / Steel Wool |
本作は、複数のプロデューサーと共に制作されたアルバム。アンダーソン・パークの作品の中では、比較的エレクトリックで都会的な仕上がりになっています。
本作は、アンダーソン・パークの活動拠点であるLAのアーティスト、フライング・ロータスのブレインフィーダー関連作品や、同じくLAのタイラー・ザ・クリエイターのオッド・フューチャー関連作と近い感触があり、トラップを匂わす不気味なムードと、ローファイ、かつ、手作り感のあるメロウでチルいトラックなど、LAらしいからっとした肌触りながら、当時のトレンドを匠に自分の世界観とシンクロさせており、完成度の高いデビュー作。
活動を共にするバンド「ザ・フリー・ナショナルズ(The Free Nationals)」のメンバーは、アンダーソン・パークがサンタバーバラのマリファナファームで働いていたころからの付き合いで、アンダーソン・パークは成功を手に入れた今、「ザ・フリー・ナショナルズ」の成功も手伝おうと考えているという。
こういうの凄く大事だと思う。
実力を磨きあって、共に登っていける仲間。馴れ合いじゃない、真剣なプロセス。
本作の生楽器パートももちろん「ザ・フリー・ナショナルズ」による。
1stアルバムからの1stシングル「ミス・ライト」は、アンダーソンのセルフプロデュースで、メロウでエモいメロディーが印象的な名曲。サンタナ系ギターソロがエモさを加速させてます。
下記は2016年のサウス・バイ・サウスウエストに出演した際に演奏した「ミス・ライト」。ライブパフォーマンスのレベルの高さも人気を後押ししている。オマケ的なドラムスキルではないから、本気のグルーヴを聴かせてくれる。
本作は、TOKiMONSTAプロデュースの「ゲット・エム・アップ」のように、浮遊感のあるドリーミーな楽曲もあれば、1stアルバムからの2ndシングル「ドラッグス」のようにトラップもあり、センスの幅を垣間見せます。
3.2ndアルバム
タイトル | MALIBU(マリブ) |
リリース | 2016年1月15日 |
レーベル | Empire / Steel Wool |
本作は、2014年のデビューから2年後にリリースされていますが、1stアルバム制作時に収まりきらなかった楽曲を含んでいます。本作の特徴は、「バンドサウンド」をフォーカスしているところにあります。
1stアルバム制作時に収まりきらなかった楽曲とは、1stアルバムのムードではないと判断された曲や、ソウルフルすぎる曲などで、1stアルバム時はアンダーソン・パーク自身が、自分自身の音楽性に対する自信が充分ではなかったと、本人は振り返っていたりします。
『Venice』の時はそれらの曲は出せる自信がなかったんだ。個人的な内容過ぎたということもあるし、自分としては、もっとモダンでエレクトリックなものを出したかったというのもある。ソウルのアプローチを前面に出していいのかも不安だった。
出典:R&B/ヒップホップ・シーン最注目の存在!アンダーソン・パック インタビューが到着
実は、アンダーソン・パークは本作のリリース以前に、コラボ作品を制作しています。それは、ノレッジとのプロジェクト「NxWorries(ノー・ウォーリーズ)」の作品Yes Lawd!。
Yes Lawd!からの1stシングルSuedeを、2015年2月10日にリリース(Stones Throw Records)しています。
そのSuedeが、ドクター・ドレのレーベル、Aftermathの目に止まり、それをきっかけに、ドクター・ドレの18年ぶりのスタジオアルバムComptonにアンダーソン・パークは参加し、さらなる前進を誘発しました。
以上の流れを汲んでリリースされるのが次章の3rdアルバム、Oxnardになります。
そして、本作MALIBUは、各方面から大絶賛されたアンダーソン・パークの代表作です。
本作には、9th Wonder、クリス・デイヴ、マッドリブ、ケイトラナダなど、かなり豪華なアーティストが参加(プロデュース)しています。
本作の魅力は、アンダーソン・パークの声を生かした歌モノにアリ。
そして、本作はグラミーのアーバン・コンテンポラリー・アルバムにノミネートされたところもポイントで、バンドサウンドを基調としつつも、極めてアーバンな響きを持った作品に仕上がっています。
シングルカットされている「ザ・シーズン / キャリー・ミー」、「アム・アイ・ロング」、「ルーム・イン・ヒア」、「カム・ダウン」以外にも、アンダーソン・パーク自身が書いた「プット・ミー・スルー」や、Rapsodyをフィーチャーした「ウィズ・アウト・ユー」など、どこを切っても退屈な要素がまるでない。
なかでも、特にファンキーな「カム・ダウン」は一度聴いたら耳から離れず病みつきになる人気曲。
4.3rdアルバム
タイトル | OXNARD(オクスナード) |
リリース | 2018年11月16日 |
レーベル | Aftermath / 12 Tone Music |
先述の通り、本作は、エグゼクティブ・プロデューサー兼全曲のミックスをドクター・ドレが手掛けています。レーベルも、ドクター・ドレのAftermathからのリリース。
本作も豪華なコラボレーターを招き意欲的な仕上がり。
本作には、ドクター・ドレーはもちろんのこと、各楽曲にはスヌープ・ドッグ、Qティップ、ケンドリック・ラマー、プシャT、Jコール、さらに、前作から引き続き9th Wonderやクリス・デイヴなど、正真正銘の「錚々たるメンツ」が参加しています。
壮絶的な豪華参加アーティスト。震えます。。
本作の作風は、前作に続き、メロウな曲や、ソウルフルな曲など、バンドサウンドを生かした歌モノがフィーチャーされていますが、特徴的だなと思うのは、本作はラッパーを多く起用することで、ソウルR&Bのメロウな側面と、ヒップホップの側面を心地よくブレンドしているところです。
本作からの1stシングルTINTSは、ケンドリック・ラマーをフィーチャーし、グルーヴィーでキャッチーな傑作です。
TINTSはオマス・キースのプロデュース。オマス・キースは、エリカ・バドゥ、ジョン・レジェンド、フランク・オーシャンなどのプロデュースで知られる敏腕。ソウルフルかつ、ディスコティックな心地よいグルーヴがクセになります。
5.4thアルバム
タイトル | VENTURA(ヴェンチュラ) |
リリース | 2019年4月12日 |
レーベル | Aftermath / 12 Tone Music |
本作は、前作に続き、エグゼクティブ・プロデューサー兼全曲のミックスをドクター・ドレが手掛けており、2020年の「グラミー・ベストR&B作品賞」を受賞しました。
ちなみに、本作は前作Oxnardと同時期に制作されています。
本作の特徴は、アンダーソン・パークの作品史上で、最もR&B作品としての趣が強いところにあります。
そして、今回もゲストが超豪華です。
前作はラッパーとのコラボレーションに比重があり、ヒップホップ色が濃いめでしたが、対象的にR&Bシンガーとの共演が多いのが本作の特徴。
Oxnardでラッパーをフィーチャーし、VenturaでR&Bシンガーをフィーチャーしており、アンダーソン・パークの懐の広さが伺い知れる連作。最高。
なにしろ、ミラクルズのスモーキー・ロビンソンとの「メイク・イット・ベター」では、期待通りのメロウソウルを披露しており、さらに、「リーチン・トゥー・マッチ」ではレイラ・ハサウェイの真骨頂ともいえるクールでエモーショナルのヴォーカルが楽しめるので、本作は、アンダーソン・パークがシンガーとしてトップクラスに上り詰めた証となるのではないでしょうか。
さらに、「カム・ヒア」でアウトキャストのアンドレ3000と、「トワイライト」はファレル・ウィリアムスがプロデュースで入っており、「ジェット・ブラック」にはブランディ、「ワット・キャン・ウィ・ドゥ?」ではネイト・ドッグと、あまりにも豪華すぎることがご確認いただけるかと思います。最高。
6.結論、極上グルーヴ職人
アンダーソン・パークは、グラミー最優秀ラップ・パフォーマンス賞作品も受賞しており、シンガーとして、ラッパーとして、マルチプレイヤーとして、そしてプロデューサーとしても評価を高めています。
また、歴代のグラミー最優秀ラップ・パフォーマンス賞作品もぜひチェックしてみてください!
» 「グラミー最優秀ラップ・パフォーマンス賞受賞作品」
2022年に始まるレッチリの世界ツアーで、イギリスとパリ公演の2カ国でスペシャルゲストを務めるアンダーソン・パーク。
なお、レッチリの2022年ツアー情報は下記にて逐一更新中です。
» 「レッチリ2022世界ツアー情報!【図解ツアー順路】(10月11日更新)」
個人的には、2ndアルバム収録の「カム・ダウン」がツボで、そこから彼の作品を漁るようになりました。
アンダーソン・パークが気に入ったら、彼と共に活動するバンド、The Free Nationalsもきっと気にいるはず。不良っぽさが絶妙です。
フリー・ナショナルズもチェックしてみてください!
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