本記事では、サンダーキャットの経歴と活動を解説します。
気楽にお楽しみください。
Enjoy.
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1.サンダーキャットの経歴
サンダーキャットこと、ステファン・ブルーナーは1984年10月19日、カリフォルニア州ロサンゼルス出身です。
サンダーキャットは、5歳からベースを始めています。
サンダーキャットは、ベーシストとして、その超絶技巧が高く評価されており、さらにシンガーとして、そしてプロデューサーとしても高く評価されています。
下記のとおり、4枚目のスタジオアルバム、It Is What It Isは、2021年のグラミー賞において、「最優秀プログレッシブR&B賞」と、「最優秀R&Bレコード賞」を受賞しています。
サンダーキャットは大のベジータ好き。
サンダーキャットは、音楽一家で育ち、13歳ですでにプロのセッション・ミュージシャンとして活動を始めている。
サンダーキャットは、ソロデビュー以前は、エリカ・バドゥ(2008年の4thアルバムNew Amerykah Part Oneの3, 6, 8, 9、2010年の5thアルバムNew Amerykah Part Twoの2)のバックバンド、さらにはLAハードコアパンクバンドのスーサイダル・テンデンシーズ(2002から2011の9年間、メンバーとして活動しており、レコーディングは2010年のNo Mercy Fool!/The Suicidal Family、2013年の11thアルバム13に参加)のベーシストとして活躍しており、その後フライング・ロータスのアルバム「Cosmogramma」にフィーチャーされたことがキッカケでソロデビューを決めたという。
彼がアルバム「Cosmogramma」(2010年)で俺をフィーチャーしてくれて、「お前は1人のアーティストとして活動をするべきだ」と助言してくれたんだ。
出典:世界で愛されるベーシスト、サンダーキャットにロングインタビュー アーティスト、オタク、黒人としての価値観と人生観
※上記の「彼」とはフライング・ロータスのこと。
サンダーキャットのすべての作品は、フライング・ロータス主催のブレインフィーダーからリリースされています。
サンダーキャットは、ジャコ・パストリアスやスタンリー・クラークなどの技巧派のフュージョン系ベーシストからの影響や、ソウル、R&Bなど、さらにはゲーム音楽など、幅広く音楽を吸収してきており、ミレニアル世代らしい音楽性が持ち味。
下記の動画で、サンダーキャットのルーツを垣間見ることができます。
先人へのリスペクトや音楽に対する愛に満ち溢れたサンダーキャット。
ちなみに、サンダーキャットは、アニメ好きとしても有名で、アーティスト名のサンダーキャットの由来は、アメリカのTVアニメ「サンダーキャッツ(Thunder Cats)」。
さらに、ジブリ・AKIRA・攻殻機動隊・エヴァンゲリオン・ドラゴンボールZの大ファンであることを公言しているほど、サンダーキャットは、日本のアニメも愛している。
上記の動画で、サンダーキャットの頭部に付いているモノ、気になった方もいるはず。これ、見る人が見ればわかるかと思うのですが、何を隠そう「インターフェイス・ヘッドセット」を装着しています。念の為、「インターフェイス・ヘッドセット」とは、下記のとおりです。
サンダーキャットは、ベースを始める以前から絵を書くことにも親しんでおり、過去には将来アニメーターになろうか考えていたほど。
では、ここからはサンダーキャットのアルバムを見ていきましょう!
2.1stアルバム
タイトル | The Golden Age Of Apocalypse |
リリース | 2011年8月29日 |
レーベル | Brainfeeder |
先述の通り、ソロデビューのキッカケとなったフライング・ロータスのレーベル、ブレインフィーダーから1stアルバムはリリースされました。
本作は、ローファイ、かつ、アブストラクトな、ブレインフィーダーのレーベルカラーともいえる、ゲームサウンドを随所に取り入れつつ、サンダーキャットらしいプログレ・フュージョン系のムードが強めに出ており、超絶技巧ベースも聴くことができます。
全編に渡ってスペーシーでメロウなムード。
プロデューサーとゲスト
本作のプロデューサーは、サンダーキャット自身と、フライング・ロータスこと、スティーヴ・エリソンの2名。
スティーヴ・エリソンは1983年10月7日生まれで、伝説的サックスプレーヤーであるジョン・コルトレーンの甥としても有名。
フライング・ロータスの作品にも共通した要素であるゲームサウンド。スーファミ世代のオタクらしいマニアックなアプローチが妙に心地よい。
ゲスト・アーティストは、エリカ・バドゥ、クリス・デイヴ、ロナルド・ブルーナー・ジュニア(実兄)、さらにレーベルメイトでもあるカマシ・ワシントン、オースティン・ペラルタ、ドリアン・コンセプトなど、とっても豪華な面々。
※下記もあわせてどうぞ!
ちなみに、ドリアン・コンセプトといえば下記のMicro Korg動画が有名です。
バランス感覚
本作は、ヒップホップ、R&B、ジャズ、フュージョン、テクノ、ゲームサウンドなど、多種多様な要素をミックスしていくバランス感覚はミレニアル世代ならではの個性だと思います。
ジョージ・デュークのFor Love I Comeのカバーも、見事にサンダーキャット仕様に仕立てられています。
サンダーキャットの真面目なオタク気質に基づく、知識とテクニックに裏付けされた安定感のある演奏技術と、溶けて混ざり合っていくような、カオティックな作風は本作から既に健在。
3.2ndアルバム
タイトル | Apocalypse |
リリース | 2013年7月9日 |
レーベル | Brainfeeder |
本作も、ブレインフィーダーからのリリース。
本作も前作同様、アルバムを前提とした制作というよりは、日々の積み上げを組み立てていく感覚で制作されているようです。
本作は、前作以上にフライング・ロータスの助言も手伝い意識的に、サンダーキャットのボーカルが多く取り入れられており、プログレ・フュージョン系の要素よりも、空間的な広がりと、声と声が絡み、空間の中に溶け混んでいくような、メロウ、かつ、アブストラクトなムードに重きを置いた作風になっています。
なお、本作にも、元マーズ・ヴォルタのトーマス・プリジェンが参加しており、本作のアブストラクト、かつ、カオティックなムードは、トーマス・プリジェンの仕業でもあります。
ボーカル
本作は、サンダーキャットのボーカル熱が上がっており、Heartbreaks + Setbacksや、Special Stage、Oh Sheit It’s Xなど、多くの楽曲で繊細、かつ、ソウルフルなサンダーキャットの歌声を聴くことができます。
Sevenは、複雑にうねりながら都会のビートを鳴らしつつ、甘くポップで、キャッチーなサンダーキャットのボーカルが溶け合い、RPGゲームの難解なボス戦に引き込むようなテクニカルなベースがクセになる楽曲。
本作でも多種多様な要素をコラージュして構築する手法も生かされており、ダンサブルなビートの中に唐突に提示されるカオスな要素はサンダーキャットらしい。
エンディングのA Message for Austinは、レーベルメイトであり、友達のオースティン・ペラルタへ捧げられています。オースティン・ペラルタは、2012年に22歳の若さで急逝、死因はアルコールと薬物の起因するウイルス性肺炎。
オースティン・ペラルタは、ジャズピアニストとして活躍しており、父はZ-BOYSのオリジナル・メンバーでレジェンド・スケーターであり、スケート・ブランドのパウエル・ペラルタの創設者、そして映画監督でもあるステイシー・ペラルタです。
オースティン・ペラルタは、3枚のアルバム(内1枚はブレインフィーダーから)をリリースしており、サンダーキャットのデビュー作にも参加していました。オースティン・ペラルタの死は、サンダーキャットにとって大きなショックだったのだと思います。
“A Message For Austin”は彼に〈さよなら〉を伝えるために書いた曲なんだ。俺自身も彼がいないことを受け入れなくちゃと思って……
出典:THUNDERCAT 『Apocalypse』
ジャコ・パストリアス節
Tron Song、Evangelionなど印象的なタイトルのナンバーもあり。Evangelionはメロウで浮遊感のあるメロディーが切ない。
いずれの楽曲も難解な要素を含んではいるけど、サンダーキャットの優しい人柄が、不思議なほど滲み出て感じられる。
We’ll Dieではジャコ・パストリアスのPortrait Of Tracyを彷彿させる美しいメロディが確認できます。
4.3rdアルバム
タイトル | Drunk |
リリース | 2017年2月24日 |
レーベル | Brainfeeder |
本作Drunkは、これまでのアルバムと比較すると、親しみやすいソングライティングとなっており、AORフレイバーすら匂わすポップな仕上がり。
本作は、豪華なゲストを多数起用していることも手伝い、非常に話題性も大きかったため、サンダーキャットの名を世に知らしめた出世作となりました。
本作の特徴は、多種多様なアーティストとコラボレーションすることで、多角的にサンダーキャットの魅力を浮き上がらせている点と、もう一つ、超絶技巧ベーシストというプレイヤー的観点から、楽曲そのものの総合的な完成度の高まりを感じさせる点にあると思います。
豪華ゲスト
本作には、マイケル・マクドナルド(Show You the Way)、ケニー・ロギンス(Show You the Way)、ウィズ・カリファ(Drink Dat)、ケンドリック・ラマー(Walk on By)、マック・ミラー(Hi、日本盤のみ収録)、カマシ・ワシントン(Them Changes)、ファレル・ウィリアムス(The Turn Down)、ディアントニ・パークス(Jethro、Where I’m Going)などなど、錚々たる豪華ゲストが参加しています
8ビットゲームサウンドも健在ではあるけど、テクニカルなジャズの素養を土台としつつ、メロウなグルーヴづくりへの集中力が高まっている印象を受けました。
彩り豊かなビート
Jethro、Where I’m Goingでドラムを担当しているのはマーズ・ヴォルタやオマー・ロドリゲス・ロペスの作品でも知られるディアントニ・パークス。
The Turn Downではファレルらしいグルーヴの中で、サンダーキャットらしさが溶け込む感じも本作ならではで、多くのゲストとのコラボが多角的にサンダーキャットの魅力を引き立てています。
下記の曲、Tokyoのような、遊び心のある楽曲にしても、1つ1つにサンダーキャットらしいユニークな感性を感じさせますね。
ちなみに下記の画像、上記のTokyoのMV撮影翌日にオフで再び訪れた秋葉原で撮影されたものだとか。笑
これ取材受けてるのサンダーキャットでは??秋葉原楽しんでるなー。 pic.twitter.com/xnuMI860EJ
— blue (@9blue_y) May 16, 2017
5.4thアルバム
タイトル | It Is What It Is |
リリース | 2020年4月3日 |
レーベル | Brainfeeder |
本作は、本記事第1章でも触れたとおり、2021年のグラミー賞において、「最優秀プログレッシブR&B賞」と、「最優秀R&Bレコード賞」を受賞した大傑作。
本作は、ジャズ、AOR、アブストラクトなど、以前からのサンダーキャットらしさに併せて、益々躍進するソングライティングセンスとボーカルが魅力。
豪華コラボレーション
本作も豪華なコラボレーションがたっぷり楽しめます。
ミゲル・アトウッド・ファーガソン、ルイス・コール(ブレインフィーダー)、チャールズ・ディッカーソン(モノ/ポリー)、マーク・スピアーズ(サウンウェイヴ)、さらに本作でも、カマシ・ワシントンが参加しています。
Black Quallsは、スティーヴ・レイシー、スティーヴ・アーリントン、そしてスティーヴ・ブルーナー(サンダーキャット)による3スティーヴと、チャイルディッシュ・ガンビーノという超豪華メンバーっぷり。現代版サイケデリックソウルなアレンジがかっこいい。
さらに、本作にはオッド・フューチャー界隈を賑わせ、ヴァージル・アブロー率いる新生ルイ・ヴィトンの2019SSコレクションでのライブパフォーマンスを披露したことも記憶に新しい、バッドバッドナットグッドが参加しています。
バッドバッドナットグッドとのコラボは、King of the Hillで聴くことができ、サンダーキャットとバッドバッドナットグッドが織りなすアトモスフェリックな音像は深淵。
また、Fair Chanceにはラッパーのタイ・ダラー・サイン、リル・Bが参加しています。
さらにさらに、エンディングのIt Is What It Isには、ペドロ・マルチンス(カート・ローゼンウィンケルのアルバムCaipiに参加しているブラジル人ギタリスト)が参加している点も見逃せない。
ドラゴンボール
本作には、サンダーキャットのドラゴンボール愛が溢れ出した楽曲Dragonball Duragが収録されています。
タイトルにしちゃう潔さに好感が持てます。笑
楽曲自体は、サンダーキャットらしいメロウで遊び心あるナンバーに仕上がっています。ちなみに、Duragとは、バンダナのようなモノの名称。
ベジータだね! 『ドラゴンボール』に限らず、日本の漫画やアニメには好きなキャラが一杯さ。今日着ているTシャツの『北斗の拳』のケンシロウもそうだよ(笑)。『ドラゴンボール』だとブロリーも好きなキャラだね。
出典:悲しみの先のフュージョン
ベジータチョイスにも激しく共感!笑
6.結論、超絶メロウ職人
サンダーキャットは、2022年に始まるレッチリの世界ツアーで、全32公演中、なんと29公演もスペシャルゲストを務めます。
なお、レッチリの2022年ツアー情報は下記にて逐一更新中です。
» 「レッチリ2022世界ツアー情報!【図解ツアー順路】(10月11日更新)」
レッチリのフリーは、ジャズも大好きで自身もトランペットを演奏しており、デーモン・アルバーン、トニー・アレン、フリーによるスーパーバンド、Rocket Juice & the Moonのアルバムでサンダーキャットとも共演していたりと、結構繋がりが強かったりします。
ちなみに、私は3rdアルバムDrunkのメロウで都会的な雰囲気にハマりサンダーキャットに目覚めました。
また、サンダーキャットは超売れっ子なので、ゲスト参加するケースも多く、ケンドリック・ラマー作品、カマシ・ワシントン作品、マック・ミラー作品などなどでも極上のグルーヴは楽しめちゃいます。
※下記もあわせてどうぞ!
さらに、先述した2022年に始まるレッチリの世界ツアーでは、イギリスとパリの2公演で、サンダーキャットと共に、アンダーソン・パークもラインナップされており、サンダーキャットはアンダーソン・パークの3rdアルバムOxnardに収録されているLeft to Rightにも参加しちゃってます。
みんな繋がりまくってますね。
アンダーソン・パークの記事はこちら
» 「Anderson .Paakとは?【結論:極上グルーヴ職人】」
最後に、サンダーキャットらしい素敵な一節をシェアして終わりたいと思います。
何かを決めつけて音楽を作る必要はないよ、自由こそが音楽だから。
出典:世界で愛されるベーシスト、サンダーキャットにロングインタビュー アーティスト、オタク、黒人としての価値観と人生観
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