マーズ・ヴォルタの1stからラストアルバムをおさらいしたいな。併せてジョン・フルシアンテが参加した楽曲も知りたい。
マーズ・ヴォルタの全アルバムをまとめました。
基本を知りつつ、深堀りしていきます。
※目次もご活用くださいませ。
深みを増した極上のグルーヴ
マーズ・ヴォルタ全作品一覧
マーズ・ヴォルタがリリースした2003年の1stアルバムから、ラストアルバムとなった2012年の6thアルバムまでの全作品は下記のとおり。
- 1.De-Loused in the Comatorium
- 2.Frances the Mute
- 3.Amputechture
- 4.The Bedlam in Goliath
- 5.Octahedron
- 6.Noctourniquet
いずれのアルバムもオマーの世界観が色濃く反映されたサイケデリックでアーティスティックなプログレッシブ・ロックを基調とした作品ですが、メンバー編成の違いで作品のコンセプトも明確に変わっているので各作品の変化も楽しめます。
僕の個人的なおすすめは、2ndのFrances the Muteと、5thのOctahedron。
では順にチェックしていきましょう!
1.De-Loused in the Comatorium
タイトル | De-Loused in the Comatorium |
---|---|
リリース | 2003年6月24日 |
制作時期 | 2002年〜2003年 |
プロデューサー | Rick Rubin |
ボーカル | Cedric Bixler-Zavala |
ギター | Omar Rodríguez-López |
ドラム | Jon Theodore |
キーボード | Isaiah “Ikey” Owens |
ベース | Flea |
サウンド・マニピュレーション | Jeremy Ward |
2003年6月24日リリース、リック・ルービンのプロデュースで制作されたマーズ・ヴォルタの1stアルバム「ディラウズド・イン・ザ・コーマトリアム」。
全編(TelevatorsとAmbuletzを除く)でレッチリのベーシスト、フリーが参加。
マーズ・ヴォルタの作品はどれも、コンセプチュアルな作風で、本作はボーカルのセドリックと、サウンド・マニピュレーション・アーティストでマーズ・ヴォルタのオリジナル・メンバーである、ジェレミー・ワードによるショート・ストーリーをベースに制作されています。
セドリックの友人で、同郷のエル・パソ出身のアーティスト、フリオ・ベネガスの死についても描かれており、混沌としたサウンドテクスチャーと相まって、狂気を伴ったドラマティックな展開の作品に仕上がっています。
マーズ・ヴォルタの作品で一貫して言える特徴は、ギタリストのオマーが描くサイケデリックでカオティックなサウンドテクスチャーと、ドラマーが描く超絶グルーヴにあります。
ビルボード200で39位を記録、50万枚を超えるビッグセールス
本作はGuitar World誌の、グレートギターアルバム100に55位に選ばれた作品で、50万枚を超えるビッグセールスを記録しています。プログレ、ポストハードコア、エクスペリメンタルの作品としては驚異的なセールス。
本作から3rdアルバムまで在籍していたモンスター・ドラマーの、ジョン・セオドアのグルーヴを浴びたくてマーズ・ヴォルタを聴くといってもいいほど。
ジョン・セオドアのドラミングは、肉体を限界に追い込むような猛烈なスタイル。
「ディラウズド・イン・ザ・コーマトリアム」は、ジョン・セオドアとフリーの共演も相まって、「強靭なグルーヴ」と「オマーのカオス」がせめぎ合うという、強烈なサウンドを提示し、多くの音楽ファンは魅了されました。
ジョン・フルシアンテ参加曲:Cicatriz ESP
ジョン・フルシアンテが参加したCicatriz ESPは、静と動が混在した激しくドラマティックな楽曲。
ジョンとオマーのギターが複雑に絡み合うサイケデリックなアレンジ、3分すぎのギターソロから静寂へと向かう展開にジョン・フルシアンテらしい情緒あふれるフレーズがたっぷり聴くことができます。
2.Frances the Mute
タイトル | Frances the Mute |
---|---|
リリース | 2005年2月7日 |
制作時期 | 2004年1月〜10月 |
プロデューサー | Omar Rodríguez-López |
ボーカル | Cedric Bixler-Zavala |
ギター | Omar Rodríguez-López |
ドラム | Jon Theodore |
キーボード | Isaiah “Ikey” Owens |
ベース | Juan Alderete |
パーカッション | Marcel Rodríguez-López |
2005年2月7日リリース、オマーのセルフプロデュースで制作されたマーズ・ヴォルタの2ndアルバム「フランシス・ザ・ミュート」。
前作でベースを担当したレッチリのフリーに変わり、ホアン・アルデレッテ(元レーサーX)が正規ベーシシストとして加入。
本作は、ダブ、アンビエントの要素にサルサの香りを大いに漂わせたエキゾチックなプログレサウンドに仕上がっています。前作以上に、ラテン色が濃く出ており、益々唯一性が高まっててかっこいい。
ビルボード200で4位を記録
ビルボード200で4位を記録した本作。
5曲76分57秒という、壮大なプログレ作品。各曲は細かくセクションが分かれており、組曲構成になっています。
セドリックのハイトーン・ボーカルが全編で圧巻の迫力。オマーの複雑でカオティックなムードは前作から引き継がれてはいるものの、前作よりも遥かに洗練された印象の本作。
フリーは今回トランペットで、The Widowと、Miranda That Ghost Just Isn’t Holy Anymoreの2曲に参加しています。各楽曲をシネマティックに味付けしていて、超渋い。
ジョン・フルシアンテ参加曲:L’Via L’Viaquez
ド頭からジョン・フルシアンテのギターソロから始まるL’Via L’Viaquez。
曲の折返しでもジョン・フルシアンテの太い音色のギターソロがブリッジ的に入り、楽曲のエモーショナルな側面を引き立ててますね、めっちゃかっこいい。
いかにもジョン・フルシアンテらしい、レッチリのライブで聴けるエモーショナルなギターソロにタッチが近い。
3.Amputechture
タイトル | Amputechture |
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リリース | 2006年9月8日 |
制作時期 | 2005年11月〜2006年5月 |
プロデューサー | Omar Rodríguez-López |
ボーカル | Cedric Bixler-Zavala |
ギター | Omar Rodríguez-López |
ギター | John Frusciante |
ドラム | Jon Theodore |
キーボード | Isaiah “Ikey” Owens |
ベース | Juan Alderete |
パーカッション | Marcel Rodríguez-López |
FL, TS, BC | Adrián Terrazas-González |
サウンド・マニピュレーション | Paul Hinojos |
2006年9月8日リリース、オマーのセルフプロデュースで制作されたマーズ・ヴォルタの3rdアルバム「アンピュテクチャー」。
前作リリースから1年ほどでリリースされた本作は、前作のサルサフレーバーが若干弱まり、プログレ感の方が強く表現されています。キング・クリムゾンのような、幾何学的なフレーズの応酬がかっこいい。
本作には全編に渡ってジョン・フルシアンテが参加しているというのも大きな特徴ですね。
1stと2ndは、セドリックとジェレミー・ワードのアイディアに基づくコンセプチュアルな作品でしたが、本作は様々な事象から影響を受けており、当時のアメリカで起きていた問題への言及も含まれています。
ビルボード200で9位を記録
アンピュテクチャーは、ビルボード200で9位を記録し、前作に続き高評価を得ています。
ジョン・フルシアンテが全面参加
本作から2007年制作の5thアルバム、オクタヘドロンまで、ジョン・フルシアンテはマーズ・ヴォルタのアルバム制作に全面的に携わるようになります。
また、ジョン・フルシアンテはオマーのソロプロジェクトにも多くかかわり、逆も然りで、ジョン・フルシアンテのソロアルバムにオマーがギターソロで参加したりと、ジョンとオマーは親友として多くの制作を共にします。
本作アンピュテクチャーにおいても、ロバート・フリップ系難解フレーズのオマーとの掛け合いがロック史に残るレベルの名演を残しています。
4.The Bedlam in Goliath
タイトル | The Bedlam in Goliath |
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リリース | 2008年1月29日 |
制作時期 | 2006年〜2007年 |
プロデューサー | Omar Rodríguez-López |
ボーカル | Cedric Bixler-Zavala |
ギター | Omar Rodríguez-López |
ギター | John Frusciante |
ドラム | Thomas Pridgen |
キーボード | Isaiah “Ikey” Owens |
ベース | Juan Alderete |
パーカッション | Marcel Rodríguez-López |
FL, TS, BC | Adrián Terrazas-González |
サウンド・マニピュレーション | Paul Hinojos |
2008年1月29日リリース、オマーのセルフプロデュースで制作されたマーズ・ヴォルタの4thアルバム「ゴリアテの混乱」。
本作からドラマーがジョン・セオドアから、トーマス・プリジェンへと代わり、疾走感あるアレンジにシフトされた印象があります。
ジョン・セオドアも、トーマス・プリジェンも、パワーと、超絶技巧を持ち合わせたドラマーですが、ジョン・セオドアがヘヴィな印象ですが、トーマス・プリジェンの軽やかさをともなったグルーヴもかなり気持ちいいです。
本作は前作までのシリアスなムードから一変し、作品のテーマ自体が遊び心と実験精神に任され、リラックス感を漂わせます。
MVなどからも出ている振り切れたような、バンドのムード。ユーモア、ジョーク、毒。
ビルボード200で3位を記録
「ゴリアテの混乱」はビルボード200で3位を記録しており、マーズ・ヴォルタ史上最も上位にランクインした作品。
グラミー受賞作品:Wax Simulacra
本作収録のWax Simulacraは、2009年のグラミー賞において、最優秀ハードロック・パフォーマンス賞を受賞し、本作はビルボード200で3位を記録し、バンド史上でも最も高い評価を得た作品となりました。
前作に続き、本作にも全編に渡ってジョン・フルシアンテが参加しているというのも大きな特徴。
また、本作を最後にキーボードのイザイア、サウンドマニピュレーションのポール、マルチ管楽器奏者のエイドリアンがバンドを脱退しました。
本作もジョン・フルシアンテが全面参加
本作でもジョンとオマーのサイケプログレは全開です。
5.Octahedron
タイトル | Octahedron |
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リリース | 2009年6月23日 |
制作時期 | 2007年、2008年8月 |
プロデューサー | Omar Rodríguez-López |
ボーカル | Cedric Bixler-Zavala |
ギター | Omar Rodríguez-López |
ギター | John Frusciante |
ドラム | Thomas Pridgen |
キーボード | Isaiah “Ikey” Owens(クレジットのみ) |
ベース | Juan Alderete |
パーカッション | Marcel Rodríguez-López |
2009年6月23日リリース、オマーのセルフプロデュースで制作されたマーズ・ヴォルタの5thアルバム「オクタヘドロン(八面体)」。
本作からリリースがワーナーへ変わりました。
マーズ・ヴォルタのお家芸的高速プログレアプローチは控えめになり、本作はミディアムテンポで味わい深い聴かせる歌モノが多くフィーチャーされており、キーボードのイザイアが脱退したこともあってか、今まで以上にシンプルなロックサウンドをフォーカスしたアレンジが本作の特徴です。
ビルボード200で12位を記録
本作はビルボード200で12位、作品全体のまとまりや各楽曲の質は決して低くないだけに、過去の作品が毎度のようにTOP10入りだったことを考えると、本作の評価はやや不思議に思える。
全体的にアコースティックなサウンドをフィーチャーした楽曲も多く、テンポも全体的にミディアムなことや、キーボードが抜けエキゾチックなムードが控えめなのが本作の魅力でもあって、サイケデリックロックの旨味も十分にある。成熟感とも思えるそれらの要素は貫禄すら漂っている。
本作もジョン・フルシアンテは全面参加
2002年頃からマーズ・ヴォルタの作品制作に関わってきたジョン・フルシアンテは、マーズ・ヴォルタ作品へのゲスト参加は本作がラストになります。
Cotopaxiなど、マーズ・ヴォルタらしいキング・クリムゾン直系の痛快プログレ・アプローチもあり、ジョン・フルシアンテが本作も全面参加していることもあり、ギターによるアプローチもかなり楽しめます。僕は結構好きなアルバム。
6.Noctourniquet
タイトル | Noctourniquet |
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リリース | 2012年3月26日 |
制作時期 | 2009年〜2011年 |
プロデューサー | Omar Rodríguez-López |
ボーカル | Cedric Bixler-Zavala |
ギター | Omar Rodríguez-López |
ドラム | Deantoni Parks |
ベース | Juan Alderete |
パーカッション | Marcel Rodríguez-López(クレジットのみ) |
2012年3月26日リリース、オマーのセルフプロデュースで制作されたマーズ・ヴォルタの6thアルバム「ノクターニキット」。
ソロモン・グランディと、ギリシャ神話のヒュアキントスを題材にしたコンセプトアルバムになっています。
本作リリース後の2013年にボーカルのセドリックが脱退を表明しバンドは解散状態となった。
セドリックのボーカルがドラマティックに展開していく本作は、マーズ・ヴォルタ史上最もシンプルなバンド編成になっている分、前作以上にボーカルの味わい深さをフォーカスしているように思う。
セドリックのボーカルは、1stからずっと魅力的ではあったし、ストーリーテラーとしての役割を持っていたけど、本作ではボーカル・メロディーの美しさがストレートに入ってくる。
Molochwalkerのようなマーズ・ヴォルタらしい、疾走感のあるプログレサウンドも健在ではあるけど、Vedamaladyのようなサルサ色のある少し懐かしいマーズ・ヴォルタ感がハイライトだと思う。
本作がマーズ・ヴォルタのラストアルバムであることを実感させるかのように哀愁を帯びつつ、前向きに、でも確実に、別れを告げられているかのよう。成熟したマーズ・ヴォルタ。
本作からドラマーがトーマス・プリジェンから、ディアントニ・パークスへ変わりました。
いよいよ登場という感じもあるディアントニ・パークス。ジョン・セオドア脱退後にサポートで既に参加(2006年)していたディアントニ・パークスは、自身のプロジェクトなど多岐にわたる活動もあり、さらに「誰かの代役」を好まないため、一時はサポートに留まりましたが、オマーとの数々のプロジェクトを経て本作でレコーディングに参加となりました。
本作の見所として、ディアントニ・パークスのドラミングがあります。ドラムを推しだしたミックスも手伝いかなり強烈で最高なドラムが楽しめます。
ビルボード200で15位を記録
「ノクターニキット」はビルボード200で15位を記録、前作からやや下降気味。
とはいえ、ビルボード200で15位というのは、市場全体から見ればかなりの評価を得ている作品であることに変わりはないですね。
ジョン・フルシアンテは本作不参加
本作にはジョン・フルシアンテは不参加。本作レコーディング開始時の2009年は、ジョン・フルシアンテがレッチリを正式に脱退した年であり、ソロ作品制作においても新たな一歩となる年。
2009年以降、ジョン・フルシアンテはデジタルレコーディングを本格的に始めており、ギターと軸とした制作からドラムマシーンを主軸にしたプログラミング中心の制作に集中しています。
マーズ・ヴォルタ作品に不参加であるのも、いかにソロ作品に対する集中力が高かったが伺えるように思います。
2010年にレター・レファーを制作し、翌年にPBXを制作しているので、プログラミングスキルがメキメキと向上している真っ只中だったというわけです。
マーズ・ヴォルタの魅力
オマーとセドリックの強烈な個性がせめぎ合うサイケとカオスが渾然一体となったプログレバンド、マーズ・ヴォルタ。
解散後それぞれに活動を精力的に行っているので、マーズ・ヴォルタの文脈から各ソロ・プロジェクトをチェックしてみても面白いです。
特に、オマーの活動は凄まじい創作力があるので、プログレ系のロックに関心がある方はそちらも是非チェックしてみてください!
今回紹介した作品をまとめておきます。
今日は以上です。
skでした。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
記事が参考になりましたら幸いです。
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