本記事は、Red Hot Chili Peppersの10thアルバムI’m With Youと、アルバム未収録曲集I’m Beside Youを解説します。
レッチリの作品は、アルバム未収録曲でも侮れない。
※目次もご活用くださいませ。
深みを増した極上のグルーヴ
- 1.I’m Beside Youは全17曲
- 2.I’m Beside You収録曲一覧
- 3.I’m With Youとジョシュ・クリングホッファー
- 4.ジョシュだからこそのセンス
1.I’m Beside Youは全17曲
2011年の8月26日にリリースされたレッチリ(Red Hot Chili Peppers)の10枚目のスタジオ・アルバム、『アイム・ウィズ・ユー』。
14曲収録された『アイム・ウィズ・ユー』制作時に、レコーディングされ未発表になっていた貴重な音源。
その未発表音源17曲は、デジタル配信限定というかたちでリリースされた(後に7インチのアナログでリリースされた)。
今回はそれらの未発表音源と、10年間レッチリを支えてきたギタリストのジョシュ・クリングホッファーの功績を併せて紹介します。
2.I’m Beside You収録曲一覧
Strange Man / Long Progression
タイトル | Strange Man / Long Progression |
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リリース | 2012年8月15日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
Strange Man
“Aeroplane”を彷彿とさせるドリーミーなギターワークから、ゆるファンクへ展開しながら、ぐるぐる回遊する感じ、暑い夕方にビーチでだらだらしながら聴きたい。
Long Progression
リズム隊がめっちゃ気持ちいいグルーヴで、ジョシュの鮮やかなコーラスハーモニーもステキです。ジョシュのグランジ感満載のファズ・ギターソロも最高。
Magpies on Fire / Victorian Machinery
タイトル | Magpies on Fire / Victorian Machinery |
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リリース | 2012年9月7日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
Magpies on Fire
『Blood Sugar Sex Magik』の頃の感触を思い出させる優しい曲。
Victorian Machinery
ハードでヘヴィなグルーヴと『By The Way』の“Tear”にも近い繊細なメロディが交錯する楽曲。インダストリアルな響きのリズムパターンがかっこいい。
Never Is a Long Time / Love of Your Life
タイトル | Never Is a Long Time / Love of Your Life |
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リリース | 2012年9月28日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
Never Is a Long Time
『One Hot Minute』収録の名曲“My Friends”系のメロディアスなバラードから、ヘヴィグルーヴへ展開する、複数のアイデアをミックスする手法はこの時期多用されている。フリーが言っていた“バンドへの深い愛の自覚”という部分が顕著に製作に現れている。
Love of Your Life
溢れんばかりのジョンテイストなジョシュのアルペジオに、RHCPの守護神へとなる覚悟とリスペクトを感じさせる。
The Sunset Sleeps / Hometown Gypsy
タイトル | The Sunset Sleeps / Hometown Gypsy |
---|---|
リリース | 2012年11月2日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
The Sunset Sleeps
この感触はなんだか新鮮、西海岸の風とヴェルヴェット・アンダーグラウンドを溶かし込んだような世界観。
Hometown Gypsy
ジプシーロカビリー、ジム・ジャームッシュの映画をみているような、トム・ウェイツやイギー・ポップがうろついてそうな、そういう曲。かっこいい。
Pink as Floyd / Your Eyes Girl
タイトル | Pink as Floyd / Your Eyes Girl |
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リリース | 2013年1月4日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
Pink as Floyd
“Pink as Floyd”、サイケなムードとフォーキーなムード、深く潜っていくようなプログレ的な表情もあったり、表情豊かな楽曲。ジョシュのスライドが効果的。
Your Eyes Girl
ヘヴィなリズムパターンにダークサイケなギター、ボブ・マーレー調ともとれるメロディライン。ソロパートで個々がカオスに溶け合う感じがかっこいい。
In Love Dying
タイトル | In Love Dying |
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リリース | 2013年2月1日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
In Love Dying
シンプルなビートとグルグルとうねり続けるベースライン。浮遊感のあるギター、アンソニーのリリック、陶酔系のグルーヴがぐいぐい引き込んでくるカッコいい。
ジョシュの空間デザイン力を堪能しよう。
Catch My Death / How It Ends
タイトル | Catch My Death / How It Ends |
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リリース | 2013年7月23日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
Catch My Death
レッチリ版スミス解釈みたいな、雨のロンドン的な、めずらしく湿気を帯びたマイナーバラード。サビは王道レッチリメロディ、カリフォルニアに帰ってくる。レッチリ流演歌。
How It Ends
特徴的なギターリフがかっこいい。メロコアパンクを思わせる清々しいメロディラインと叫ぶギターのフレーズ、ジョシュの美しいコーラスワークも素晴らしくて、未発表音源なのが不思議なレベル。
This Is the Kitt / Brave from Afar
タイトル | This Is the Kitt / Brave from Afar |
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リリース | 2013年7月23日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
This Is the Kitt
痛快なファンキーギターリフ、ジョシュのこういうリフってジョンぽさを醸しつつも、かなり緻密に練られてて勢いで弾いてる風だけどメッチャ計算されてる。サビが初期レディオヘッドみたいなクリープ調のメランコリックなムードでファンクとのミックス感が超かっこいい。ギター、ベース、ドラムが一丸となってタメの効いたグルーヴをひっぱていく感じがクセになる。
Brave from Afar
80sハードロックの風情、ブラック・サバスとRUN-D.M.C.的な、メロディの掛け合いに、スーパースペーシーなギターサウンド、レッチリが『ミクスチャーロック』のトップバンドなのを思い出させる。
Hanalei / Open/Close
タイトル | Hanalei / Open/Close |
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リリース | 2013年7月23日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
Hanalei
ピアノが効果的に使用され、ドラマティックなコード進行、疾走感のあるベースとドラムが光る。
Open/Close
アンソニーのポエトリーリーディング、都会の喧騒と個々の心象風景を描くような、ストゥージスとソニック・ユースのミックス感。子どもたちのコーラスも入って世紀末感を感じさせつつ力強さを感じられる楽曲。
3.I’m With Youとジョシュ・クリングホッファー
2020年、レッチリにジョン・フルシアンテが再復帰した。個人的には全く想定外だった。もう、そういうものだと思ってしまっていた。めちゃくちゃ楽しみだし、改めてジョシュ時代のレッチリも改めて聴きたくなった。
ジョン・フルシアンテは2009年にレッチリを円満脱退、その後レッド・ホット・チリ・ペッパーズの存続を実現させ支えてきた献身的なギタリストが、ジョシュ・クリングホッファーだ。ジョシュは以前からジョン・フルシアンテのソロ作品製作を共同で行ってきた。
ジョシュ・クリングホッファーのレッチリ作品に正式に参加した1作目である『アイム・ウィズ・ユー』を紹介しておこう。
タイトル | アイム・ウィズ・ユー |
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リリース | 2011年8月26日 |
レーベル | Warner Bros. |
パーソネル | アンソニー・キーディス フリー ジョシュ・クリングホッファー チャド・スミス |
- Monarchy of Roses : 2ndシングルカット曲
- Factory of Faith
- Brendan’s Death Song : 5thシングルカット曲
- Ethiopia
- Annie Wants a Baby
- Look Around : 3rdシングルカット曲
- The Adventures of Rain Dance Maggie : 1stシングルカット曲
- Did I Let You Know : 4thシングルカット曲(ブラジル限定)
- Goodbye Hooray
- Happiness Loves Company
- Police Station
- Even You Brutus?
- Meet Me at the Corner
- Dance, Dance, Dance
苦悩
レッチリにとってギタリストというのは、常に話題性のある存在。レッチリ史上最年少で数々の伝説を残したジョン・フルシアンテが円満脱退した、2009年。そして後任ギタリストとしてレッチリに参加することになったジョシュ・クリングホッファー。
ジョン・フルシアンテよりも更に若く、ジョン・フルシアンテの後任という重責が、のしかかる。
ジョシュ・クリングホッファーは、レッチリの偉業に敬意を払いつつ、控えめながら存在感ある演奏とアイディアを随所に散りばめた。
ジョシュ・クリングホッファーらしさを表現しつつも、繊細なレッチリの側面を描くことができる素晴らしいギタリストだと思います。
バンドのメンバーというのは、家族同様、かけがえのない存在。
誰かが脱退すれば解散するバンドも多いように、ギタリストが誰でもいいわけがない。それぐらいバンドという小さなコミューンにおいては、メンバー一人の存在は大きい。
そして、レッチリはジョシュと共に、再び歩むことを決めた。
メンバーにとっても、ファンにとっても、大事な時期を共にしてきただけに、ジョン・フルシアンテの存在はあまりに大きい。
一方で、ジョン・フルシアンテが脱退しても、レッチリは健在。
ジョン・フルシアンテの脱退後のレッチリ解散危機から救ったのがジョシュ・クリングホッファー。
フリー曰く、「ジョンが脱退したら存続はないと考えていた」そう。
ジョシュは、ギタリストであり、マルチプレイヤー。長い間、ジョンのソロ作品の共同制作者として活躍しており、もともとミュージシャンから絶大な信頼を寄せられているセッション・ミュージシャン。ドラムもシンセも使いこなす。
既に構築されたレッチリサウンドというフォーマット、ファンやビジネスのことを考えれば、構築されたレッチリサウンドは継承していきたいと、きっと、ジョシュも考えたはず。
メンバーそれぞれにレッチリが求める音を熟考して、練りに練って、形にして、ようやく作品になっていて。今も昔も、レッチリにとって、レッチリサウンドを考えるのは大きな課題だったはず。
だからジョシュは、レッチリに求められる音というのを熟考しているはずだし、ジョンが築き上げた世界観をキープしつつ、求められる音というのを慎重に選んでいる。
比較されること
作品タイトルの『アイム・ウィズ・ユー』は、ジョシュのメモがきっかけだったという。そのメモに活路を見出したのはアンソニーの親心からかもしれない。
『アイム・ウィズ・ユー』の作風はポップでありながらアヴァンギャルドだった。
『カリフォルニケイション』以降のレッチリサウンドを継承しつつ、現代的な洗練した肌触りがある。
リズム隊は最強っぷりは健在だし、Even You Brutus?のアンソニーのラップも相変わらず格好いい。
ジョシュは、常にジョンと比較され苦労したと思うけど、『アイム・ウィズ・ユー』でのジョシュの細やかな仕事は冴えていたと思うし、『アイム・ウィズ・ユー』は傑作だと思う。
ただ、いわゆる「ギタリスト」として考えると、もしかしたら「期待に沿う」ような、「わかりやすさ」はたしかに少なめではあったかもしれない。
たとえば、「ギターソロ」や「リフ」といった、ギタリストに対するステレオタイプな評価軸があるとしたら、ストライクゾーンからはみ出ていた可能性は否めない。
とはいえ、ジョージ・ハリスンや、ジョニー・グリーンウッドに「ギターソロ」や「リフ」といった、ギタリストに対するステレオタイプな評価軸でジャッジしたことがあっただろうか?と思う。
もちろん、好きずきだから、それぞれに自由に楽しめばいいと思う。だからこそ、私は『アイム・ウィズ・ユー』は傑作だなあと、思います。
『アイム・ウィズ・ユー』は、レッチリらしさと新たな息吹が詰まった作品。
ジョン・フルシアンテは自分自身のクリエイティヴの追求のために、2009年にRHCPを円満脱退して、2010年以降、その期間をバンドもファンも退屈させないために、ジョシュ・クリングホッファーも含めて全力で、バンドもファンもあっためていたんじゃないかな。
フリーは「ジョンが抜けたら、このバンドは続けたくない」と、考えていた。ジョン・フルシアンテ脱退後の様々な体験を得て、フリーはバンドに対する深い愛を自覚したのだそう。だからバンドを無くしたくない、だけどジョンは脱退した。そこに長年の付き合いのある信頼できるジョシュ・クリングホッファーがいた。アツいストーリーだ。
だからこそ、今、ジョンが復活して、ファンは今なお、レッチリを感じることができている。
ジョシュ、10年間お疲れさま。
ジョン・フルシアンテ、『アイム・ウィズ・ユー』と『ザ・ゲッタウェイ』の楽曲は演奏するかなあ?
2020年、ジョン、おかえり。
4.ジョシュだからこそのセンス
I’m With Youの未発表音源、どれもかっこいいし、アルバムに収録されなかったのが不思議なぐらいの曲もあって、やっぱレッチリ凄いと痛感。
だって、これだけの曲作ってもお蔵入りになっちゃうんですよ?こういう形でファンに共有してもらえるのはとてもありがたいですよね。
新作も楽しみ。
今日は以上です。
skでした。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
記事が参考になりましたら幸いです。
※深みを増した極上のグルーヴ
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