本記事では、レッチリ(Red Hot Chili Peppers)の初代ギタリスト、ヒレル・スロヴァクの経歴、影響を受けた音楽、参考曲、プレイスタイル、使用機材を解説していきます。
アンソニー、フリーが絶大なる信頼を寄せたヒレル・スロヴァク。
※目次もご活用くださいませ。
深みを増した極上のグルーヴ
WARNER RECORDS
深みを増した極上のグルーヴ序章
WARNER RECORDS
深みを増した極上のグルーヴ続編
Music ∞♡ / Jazz / Punk / Rock / Funk / Electronic Music 1984年生まれ。東京在住。
プロフィール詳細
1.イスラエル出身・高校での出会い
ヒレル・スロヴァクは1962年4月13日生まれ、イスラエル出身です。
初代ギタリスト
ヒレル・スロヴァクと、ボーカルのアンソニー・キーディス、ベースのフリー、ドラムのジャック・アイアンズは高校時代の友人で、特に仲のいい気心知れた遊び仲間でした。
その仲良し4人が結成したバンドが、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの基礎になりました。
ヒレル・スロヴァクはレッチリの結成メンバーであり、初代ギタリストです。ところが、バンドを掛け持ちしていたヒレル・スロヴァクは、レッチリではなく、「What Is This?」に本腰を入れるべく、一度レッチリを離れてしまいます。そのため、レッチリの1stアルバムのレコーディングには参加していません。
それでも、アンソニーとフリーの熱心な説得は続き、その甲斐もありレッチリに復帰したのが、2ndアルバムからのことです。
しかし、ヒレル・スロヴァクは、ドラッグの過剰摂取により1988年26歳の若さでこの世を去ります。レッチリに2枚のスタジオアルバムを残し、急逝したヒレル・スロヴァクの創造力豊かな作風や、音楽に対する真摯な姿勢は、多くのギタリストへ影響を与え続けています。
「What Is This?」とは?
ヒレル・スロヴァクがレッチリと同時期に在籍していた「What Is This?」は、1980年から1986年の6年間活動していたニューウェーヴよりの楽曲が特徴のロサンゼルスのバンドです。この「What Is This?」に、レッチリの結成メンバーである、ヒレル・スロヴァクとドラムのジャック・アイアンズが在籍しており、「What Is This?」での活動をヒレルとジャックが優先したため、レッチリの1stアルバムにヒレルもジャックも参加していないというわけです。
ちなみに「What Is This?」のボーカル、アラン・ヨハネスは、「What Is This?」の活動の後、オルタナティブロック界隈では有名なプロデューサー兼レコーディングエンジニアとして活躍、デイヴ・グルールの「Them Crooked Vultures」や、「P.J.ハーヴェイ」「Arctic Monkeys」「吉井和哉」などの作品での活動や、自身のソロ作品作りなどの活動を行っています。
この「What Is This?」の“Flow”を聴く限り、ヒレル・スロヴァクらしいギターが重要な役割を果たしており、レッチリにおけるヒレル・スロヴァクの存在感同様に、「What Is This?」においても存在感溢れるユニークな感性は発揮されています。
実は『マザーズ・ミルク』にもヒレルが演奏した曲がある
レッチリの4thアルバム『マザーズ・ミルク』レコーディングは1988年11月に開始され、同年の6月にヒレル・スロヴァクは他界、ヒレルを失ったレッチリは、オーディションによりジョン・フルシアンテを新ギタリストに採用しました。
本作のジミ・ヘンドリックス・カバーである“Fire”は、生前のヒレル・スロヴァクが演奏したテイクが収録されています。
また、アルバムの裏ジャケには、ヒレル・スロヴァクが生前に描いた絵画がプリントされています。
その絵画の下には「This album is dedicated to the memory of Hillel Slovak(このアルバムをヒレル・スロヴァクに捧げる)」というメッセージがアンソニーの筆跡で添えられています。
結成メンバーであり、親友だったヒレル・スロヴァク。
喪失感、寂寥感、言葉にならない感情が彼らにはあったことでしょう。しかし、ヒレル・スロヴァクの死が彼らを次なるステージへ進ませました。だから、現在もヒレル・スロヴァクに敬意を払い、常に前向きに生きるレッチリ。
「アンダー・ザ・ブリッジ」に込めたアンソニーの思い
1991年リリースのレッチリの5thアルバム『ブラッド・シュガー・セックス・マジック』収録の「アンダー・ザ・ブリッジ」は、メロウなレッチリを代表する人気曲。
この楽曲の歌詞は、アンソニー・キーディスの実体験に基づく内容で、繊細な感情表現という今までにないイメージを与える楽曲になりました。
結成メンバーであり親友であるアンソニー、フリー、ジャック・アイアンズにとってヒレル・スロヴァクの死はあまりにショッキングな出来事でした。アンソニー自身も抱えるドラッグの苦しみ、ヒレルが他界したことで現実味を帯びたドラッグの恐ろしさ。全てを乗り越えて、今があるというレッチリのストーリー。
「アンダー・ザ・ブリッジ」で、繊細な心理描写を美しいリリックで歌い上げたアンソニー。
「アンダー・ザ・ブリッジ」で描かれる切なく力強い歌詞が、レッチリを更に大きく、そして多くの人達から共感されるバンドへと進めました。
2.影響を受けた音楽
続いて、ヒレル・スロヴァクが影響を受けた音楽について見ていきましょう。
ヒレル・スロヴァクが特に強く影響を受けた3つの要素がこちらです。
それでは、それぞれ見ていきましょう。
ジミ・ヘンドリックス
ヒレル・スロヴァクが影響受けた音楽、まず1人目は、ジミ・ヘンドリックス。
ジミ・ヘンドリックスは、トリッキーでサイケデリックに動き回りつつ、ファンキーなグルーヴを持っており、70s以降のあらゆるミュージシャンに影響を与えています。
ファンカデリック・パーラメントなどの影響も強いレッチリですが、ジミ・ヘンドリックスも、レッチリにとって重要なインスピレーション。
カルロス・サンタナ
ヒレル・スロヴァクが影響受けた音楽、まず2人目は、カルロス・サンタナ。
カルロス・サンタナは、70sロックの中でも、ラテングルーヴを基調とした独自の世界観を構築したギタリストです。
サンタナのギターは、情熱的で色気があり、洗練されています。
ヒレル・スロヴァクのギターが、エネルギッシュなのに汗臭くないのは、サンタナの都会的な洗練された感性の影響があるからこそでしょう。
レッド・ツェッペリン
ヒレル・スロヴァクが影響受けた音楽、まず3人目は、レッド・ツェッペリン。
レッド・ツェッペリンは、言わずもがなイギリスを代表するレジェンドバンド。
レッド・ツェッペリンのギタリスト、ジミー・ペイジのスタイルは、ブルースから影響を受けつつ、極めてアヴァンギャルド。
ジミ・ヘンドリックスや、カルロス・サンタナは、それぞれアフリカルーツ、ラテンルーツといった、土着性のあるスタイルでしたが、ジミー・ペイジのスタイルは土着感の再解釈でもあり要素の構築センスに秀でています。
ヒレルは、そういった要素の構築センスに関して非常にジミー・ペイジの影響を受けているように思います。
枠にはまらず、色気がある
ジミ・ヘンドリックス、カルロス・サンタナ、ジミー・ペイジに共通しているのは、同じことを繰り返さないことを信条とするような枠にはまらないスタイルと、それぞれに特有の色気のあるスタイルを確立しているところ。
それらをヒレル・スロヴァクは、ヒレル・スロヴァクらしいスタイルの中で影響を受けながら独自に昇華して唯一のスタイルとして確立しています。
3.参考曲
ヒレル・スロヴァクは、5年間という短い活動期間でしたが、初期レッチリを象徴する名演を残しています。
ヒレル・スロヴァクのスタイルは、下記のような特徴があります。
- サイケデリックなカッティング
- パワフルでワイルドなソロ
- パンク精神
Blackeyd Blonde
ヒレル・スロヴァクの参考曲1曲目は、1985年リリースのレッチリの2ndアルバムからBlackeyd Blondeです。
ライブでも人気の高いBlackeyd Blondeで、ヒレルのカッティングがこの曲の重要な要素になっています。
Blackeyd Blondeは、ジョン・フルシアンテ時代もライブで度々演奏してますね。
Fight Like a Brave
ヒレル・スロヴァクの参考曲2曲目は、Fight Like a Brave。
Fight Like a Braveのギターソロは、シンプル、かつ、ワイルドで、とてもヒレルらしいアイコニックなフレーズ。力強い楽曲の個性を、際立たせています。
80sロックの中でも、パンクス的なアナーキーさを感じさせるMVが、レッチリが醸しだす独特の色気とアカデミックな側面が垣間見れます。
Me and My Friends
ヒレル・スロヴァクの参考曲3曲目はMe and My Friends。
エネルギッシュなヒレル・スロヴァクのギターと、アグレッシブなフリーのベースが初期レッチリのパンキッシュな演奏を象徴するような楽曲です。
サイケデリックの要
ヒレル・スロヴァクは、初期レッチリのサイケデリック要素の要といっても過言ではないでしょう。
初期レッチリのエネルギッシュでマッチョなイメージは主にアンソニーとフリーが牽引していたと思いますが、サイケデリックでユーモラスなイメージはヒレルの存在なくして成立しなかったのではないでしょうか。
ヒレルが醸すクールで適度な脱力感が、アンソニーとフリーが醸すエモーショナルな性質を心地よくアイシングする絶妙なバランス。
ヒレル・スロヴァクは器用だからこそ何でもこなせてしまう、駆け出し時期なのでプロデューサーからの要求も多かったと思われ、ストレスもかなり多くあったのではないでしょうか。
4.プレイスタイル
ヒレル・スロヴァクのプレイスタイルを深堀ります。
ヒレル・スロヴァクのプレイスタイルは、下記のような特徴があります。
では、それぞれ見ていきましょう。
トリッキー
ヒレル・スロヴァクは、サイケデリックでトリッキーなプレイを多くの楽曲に残しています。
ヒレル・スロヴァクが使用しているフェンダー・ストラトキャスターには、音程を上下できるアームが付いており、このアームを使ったプレイもヒレル・スロヴァクの特徴です。
Freaky Styleyで、浮遊感のあるサイケデリックでトリッキーなサウンドメイクを確認してみてください。
ファンキー
Subterranean Homesick Blues(ボブ・ディランのカバー)で聴けるようなカッティングギターは、ヒレル・スロヴァクのファンキーなプレイの好例です。
一口にファンキーと言っても、スタイルは様々ですが、ヒレルのファンキーは、独特のオタク感があり、いわゆるファンクバンドのファンキーさとは似て非なるもの。
アグレッシブに動きながらも、シンプルでファンキーなカッティグプレイはジョン・フルシアンテにも継承されていくレッチリのシグネチャーサウンド。
原曲はカントリー調のボブ・ディランらしいフォーキーなブルースですが、レッチリの解釈が入ることで新たな価値を生み出していますね。
下記の動画で原曲の、ボブ・ディランSubterranean Homesick Bluesが聴けます。
アヴァンギャルド
Me and My Friendsでの、ヒレル・スロヴァクによるギターソロは、サイケデリックに彩られた滑空感があります。
いわゆるギターソロというよりは、現代アートとも言える鮮やかでアヴァンギャルドな演奏です。
ギターソロ自体が全体的に多くはない初期レッチリにおいて、ヒレル・スロヴァクは極めてアーティスティックでサイケデリックなギターソロを厳選して演奏しています。
ありきたりの枠にはまったサウンドメイクとは無縁で、力任せにならない創造力豊かなヒレル・スロヴァクの世界観は、アヴァンギャルドでオリジナリティに溢れています。
枠におさまらない
以上のように、ヒレル・スロヴァクのプレイスタイルは、枠におさまらない。
5.使用機材
ヒレルが愛用したフェンダーのストラトや、ワウやファズなどのエフェクター、メインのアンプなど、ヒレルの愛用機材を紹介します。
ヒレルのメインギター
- Fender Startocaster(59年製)
- Gibson Les Paul Standard
ヒレルの使用エフェクター
- BOSS OD-1
- Univox Super Fuzz
- BOSS CE-2
ヒレルの使用機材、詳しくは「ヒレル・スロヴァク使用機材」にまとめていますので、参考になりましたら幸いです。
6.土台を築いた
ヒレル・スロヴァクが、レッチリの土台を築いたいっても過言ではないでしょう。
そして、ジョン・フルシアンテが、その世界観を更に広げました。
レッチリのメンバー全員に当てはまる要素ですが、ワイルドで破天荒な見た目のイメージと、繊細で鋭い感受性豊かな表現力とのギャップは、人々を惹きつけて止みません。
アンソニー・キーディスが過去のインタビューでも言っていたように、「ヒレル・スロヴァクの代わりがいない」、という発言は、単に演奏技術に関することではないことは想像に容易いですよね。
レッチリというバンドは、技術よりも、アンソニー・キーディスとフリーが描きたい世界観にマッチしているか、彼らが共感できる人間かどうかを最も重視しています。だからこそ、同じ時間を過ごし楽しみ、心を許しあったヒレル・スロヴァクの存在は「代わりがいない」のでしょう。
私はヒレル・スロヴァクの情熱的なのに冷静で、なおかつ繊細で鋭い感受性に支えられた芸術性の高いファンクミュージックが大好きです。
こちらには「ヒレル・スロヴァクの機材概要【ギター・エフェクター・アンプ】」も、まとめていますので、お役立ていただけたら幸いです。
今日は以上です。
skでした。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
記事が参考になりましたら幸いです。
※深みを増した極上のグルーヴ
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深みを増した極上のグルーヴ序章
ワーナーミュージック・ジャパン
グレイトの最上級、それがグレイテスト。必聴だよ。
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