この記事では、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(レッチリ、Red Hot Chili Peppers)のギタリスト、ジョン・フルシアンテの音作り方法を、下準備→土台づくり→マキシマイズの順で解説します。
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※下記からジョン・フルシアンテ特集号も読めますのであわせてどうぞ。
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ジョンのアンプ、2/8/2020のアンドリュー・バークル追悼ライブの時はシルバージュビリー1台。今回はTV ShowもFonda TheatreもMajorが向かって右、JMP2203(Mid70s)と思われるアンプが左に。足元には引き続きSD-1と思われる黄色ペダルもあり。 pic.twitter.com/qvJNyvfR5t
— sk (@sk1984com) April 3, 2022
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1.まずは下準備

まずは下準備。
ギター・弦・ピックを用意しましょう。
ギター・弦・ピックは「素材」。
どんな達人も「素材」以上の音を生むことはできないので「素材」選びは大事なプロセスですよ。
ジョン・フルシアンテは「素材」を生かす達人です。
そのため「ジョン・フルシアンテの素材選び=機材選び」はとても参考になる。
ではジョン・フルシアンテの素材選びをチェックしていきましょう!
ギターを選ぶ
ジョン・フルシアンテは主にフェンダーのストラトキャスターを使用しています。
レスポールやテレキャスターなども使用していますが、ジョン・フルシアンテの基本となるギターはストラトキャスター。
そのため「ジョン・フルシアンテ流音作り」にはストラトキャスターが望ましいです。
ジョン・フルシアンテは、ソロ活動では「ヤマハSG2000」「ギブソンES-335」などを使用することもあり、レッチリのライブでも「テレキャスター」「ジャガー」「グレッチ」など、演奏する曲や「その時のフィーリング」で様々なギターを使用しています。
※ジョン・フルシアンテのギターに関しては下記もあわせてどうぞ。
ストラトキャスターは万能
ストラトキャスターは万能です。
ストラトキャスターはロック史を築いたギターとして最も重要なモデルの1つです。
ジョンの音作りを「分析・考察・マネ」することで「かっこいい音」の作り方を覚えたら自ずと自分らしさが見つかるはず。
そのためのギターとして、ストラトキャスターはこの上ない適役。
ストラトキャスターはどれがいい?
まずは現行品のストラトキャスターを試してみるのがおすすめ。
ストラトキャスターの特徴
- シングルコイル・ピックアップ。抜ける高音域&低出力ゆえの枯れたニュアンス。
- ロングスケール・ネック。弦のテンションがキレよくパキッとしたニュアンスを生む。
- ローズ指板とアルダーボディ。ストラトは粘りのあるサウンド特性がある。テレキャスターやレスポールでは得られない個性。
※ギター選びには下記が必ず役立ちます。
大事なのはアンサンブル
ジョン・フルシアンテは「自分たちのトーンは自分たちの中にある」とインタビューで答えていました。
この言葉には「バンドアンサンブルをとても大事にしている」という意思が含まれています。
そのため、ジョン・フルシアンテがレッチリの活動にフェンダー・ストラトキャスターを選んだのは、必然だったのだと思います。
弦を選ぶ
ジョン・フルシアンテが使用する弦は「ダダリオEXL110」。
ダダリオの弦は、アーニーボールの弦に比べ、ピンと張るテンションのある弦。
そのためチョーキングなどがやや固く感じられる。その反面カッティングやバッキング時の音のキレに優れる。プロの愛用者多し。
高価な弦は交換のタイミングを先送りにしがちですが、弦は消耗品。
適正なタイミングで交換しましょう。
その点「ダダリオEXL110」は価格が手頃なので適正なタイミングで躊躇なく交換できます。
フレッシュな弦と消耗した弦では音が異なります。
音が異なると音作りに影響します。
思い通りの音作りのために「いつも同じ状況」を心がけることは大事。
死んだ弦を使用し続けるのはピッキングニュアンスなどにも影響が出るのでおすすめしないです。
ダダリオは種類豊富ですがジョン・フルシアンテはストラトキャスターに「ダダリオEXL110」を張っています。
ストラトキャスターはロングスケールのギターなので、このゲージが程よいテンション感。
ジョンはギターソロでチョーキングも多用しますし、バッキングではファンキーなカッティングも多用する。
だからこそ「ダダリオEXL110」は好相性。
なお下記もご参考まで。
結構な割合で、ダダリオのEXL110BT(10-46)を購入される方がいますが、厳密には違うのでご注意を。
出典:ジョン・フルシアンテ歴代使用ギター【時系列で整理・解説】
※下記が「ダダリオEXL110」。「ダダリオEXL110BT」のほうが安いときがあるので、一度試しに比較してみるのも良いかと思います。
ピックを選ぶ
ジョン・フルシアンテが使用するピックは「Tortex0.6mm」。
ジョン・フルシアンテは、ピッキング・ニュアンスをかなり大事にしており「薄すぎない薄めのピック=Tortex0.6mm」を選んでいるようです。たしかに、クランチサウンドからディストーションサウンドまで「薄すぎない薄めのピック」のほうが繊細なトーンコントロールがしやすいです。
とはいえ「Tortex0.6mm」の薄さは「慣れるまで力加減が難しくやや扱いづらく感じる」かもしれない。
でも、この厚みに慣れてくると絶妙なアタック感やキレが得られるので「Tortex0.6mm」を使いこなせるようになるのはピッキングの脱力感習得のためにもおすすめ。
ピックも弦と同様に消耗品なので手頃な価格で入手できるものの方がおすすめ。
※下記「Tortex0.6mm」。ジョンのようなアルペジオにもアプローチしやすい演奏性なので僕もお気に入りのピックです。何かのついでに一度試してみては。
2.つぎに土台づくり
つぎに、土台づくりです。
エレキギターは電気で信号を送り増幅することで、成立します。
そのため、下準備で素材を揃えたら、素材を生かすための土台づくり=アンプ・セッティングが必須です。
アンプ・セッティングは下準備と同じぐらい大事。
なぜなら、アンプ・セッティングが粗末にすると、エフェクターを揃えたところで、それぞれの個性を発揮できないから。
さらに、アンプ・セッティングを軽視すると、音作りの本質を軽視することになります。
では、アンプの各コントロールをどのように調整すればよいか?チェックしていきましょう!
アンプの各コントロール調整
アンプのセッティングは「ゲイン&イコライザー」を調整します。
アンプのゲイン調整
ゲインに関しては、強くピッキングした時に「微かに歪む程度のクランチトーン」になるように調整します。使用するアンプや、適正な音量が変わるので、適切な音量に適宜調整しましょう。
ジョン・フルシアンテは「Under the Bridge」や「Californication」などメロウな楽曲を演奏する際にはほぼほぼクリーントーン。
※ジョン・フルシアンテによるビージーズ「How Deep is Your Love」のカバー。クリーントーン。いい曲ですね〜。
「微かに歪む程度のクランチトーン」にアンプを設定することで「弱く優しいピッキング・強く激しいピッキング」など、ピッキングの強弱でダイナミクスをコントロールしています。
アンプのイコライザー調整
そして、イコライザー調整ですが、ストラトキャスターの魅力を引き出すべく、
- 「中音域の旨味成分をしっかり抽出」し、
- 「耳に痛い高音域を削り」つつ、
- 「音抜けを意識した高音域の調整」する
これ大事。
ジョン・フルシアンテは、
- 耳馴染みよく、心地よいストラトサウンドを抽出しつつ、
- アタック感や音抜けをプレゼンスで調整している。
というセッティング。
モダンでヘヴィなドンシャリサウンドとは真逆の方向性。
スカスカに感じるぐらいのセッティングに調整する感じです。
そうすることでピッキングニュアンスで音の奥行きがコントロールでき、音を立体的に表現することができる。
ジョン・フルシアンテはローファイなサウンドを好む傾向で、1971年のブラック・サバス「Master of Reality」のサウンドを「どんなに爆音で聴いても耳が痛くない」と絶賛している。
ラモーンズやブラック・サバスは、初期の作品のサウンドが不明瞭でこもったサウンドだった。俺は『Sabbath Bloody Sabbath』よりも、その前にリリースされた『Masters Of Reality』のほうが優れたサウンドだと思っている。
出典:驚きのジョン・フルシアンテ ブラック・ナイツ、インタヴュー
ストラトの甘くメロウで繊細なトーンを抽出する
ポイントはストラトの甘くメロウで繊細なトーンを抽出すること。
ジョン・フルシアンテは「クリーン・クランチ・歪み」の全てを駆使しているためサウンドレンジがとても広い。
アンプで音を潰すとクリーントーンが表現できないだけでなく、歪みトーンのニュアンスも平たく立体感のないサウンドになってしまいます。
ジョンのアンプはこれ
ジョン・フルシアンテが愛用しているアンプはマーシャルの「1967メジャー&シルバージュビリー」。
シルバージュビリーはマーシャルが1987年に限定リリースした100W出力のハイゲイン・アンプ。
参考までにジョンがアンプで設定しているイコライザーの平均値は下記のようになります。
シルバージュビリーのセッティング
- TREBLE : 0
- MID : 5
- LOW : 10
- PRESENCE : 4
めっちゃ極端な感じしますがジョンの場合はコレで成立。
TREBLEが0。TREBLEが0だと、高音域を抑えてしまい音抜けが一見悪そう。
でも、ジョンのギターは、きちんとピッキングのアタック感もあり、TREBLEが0なのは腑に落ちない。
なぜこのセッティングが成立するのか?
ジョンが愛用するストラトキャスターは、シングルコイル・ピックアップのギターなので、低音域より高音域が強めに出力されるので、アンプでバランスを整える必要があります。
マーシャルアンプは高音域が強調されたサウンド特性をもっているため、アンプのイコライザーでバランスを整えないと、高音域が強調され過ぎてしまい耳に痛いサウンドになってしまう。
つまり、TREBLEを0にしているからこそ、バランスが取れている。
マーシャルのアンプは、MIDコントロールで高音域を補正している感覚に近いので、もはやこれでOK。
最後にPRESENCEで高音域を調整する
最後にPRESENCEで高音域を調整し仕上げます。
アンプセッティングには注意点がある
演奏する環境や、機材との相性でセッティングは適宜調整する必要があります。
そのため、違うアンプやギターを使うときは、常に耳で聴いて調整することが大事。
ジョン・フルシアンテのギターが格好良いのは、耳馴染みへの高い意識があってこそ。
ほぼ歪ませない。絶妙な加減が心地よい
先述のとおり、ジョン・フルシアンテ曰く、「70年代初期のレコーディング作品はどんなに音量を上げても耳が痛くなるようなことはない」と、心地よい音をジョンは大事にしています。
ちなみにジョン・フルシアンテは大量のペダルエフェクターを接続しているので、相応の音痩せが生じています。
そのため、アンプのセッティングはこのような要素も加味して調整していることでしょう。
「アンプはほぼ歪ませない」がポイント。
絶妙な加減。
「弱く優しいピッキング」でクリーン、「強く激しいピッキング」でクランチになる、セッティングです。
3.最後に味付け

そして最後に、マキシマイズです。
アンプ・セッティングで土台を固めたら、エフェクターで味付けして効果を最大化します。
ジョンはギター・アンプ・エフェクターもいずれも「定番品」。相当こだわりがあります。
BOSS CE-1 Chorus Ensemble
ジョンの音作りで必須となるエフェクター第1位といっても過言ではないのが、BOSSの第一号エフェクターとしても有名な銘機、コーラスペダルのCE-1です。
このエフェクターはコーラスといって、原音に対し僅かに遅れたタイミングの音をミックスすることで、音に揺らぎ効果を与えるエフェクターです。
ですが、重要なのはコーラスエフェクト以上に、CE-1に搭載されているプリアンプ部分。CE-1はトゥルーバイパスではないので、CE-1を繋ぐだけでこのプリアンプの影響を受けます。心地良い方向へ影響してくれます。
この音が、ジョンのクリーンサウンドにも影響しており、ふくよかなニュアンスを加味しています。
もちろん、ジョンはCE-1をコーラスとしても、使用しています。
このエフェクターに関しては、魔法の箱研究所さんでディープな考察が確認できます。
現行品のBOSS CE-2WはCE-1モードを搭載しており、温かみのあるコーラスサウンドが堪能できます。とはいえ、オリジナルCE-1にしか出せないサウンドがあるのは否めないですね〜。
BOSS DS-2 TURBO Distortion
ジョンの音作りで必須となるエフェクター、歪み部門第1位はBOSSのディストーション・ペダル、DS-2です。
ジョン・フルシアンテはこのエフェクターをTURBOモードを2にセット、レベルは3〜4、トーンとディストーションがMAX。
DS-2は、激しい歪みの中に繊細さがあり、カラッとした高音域と、心地よい中音域に特徴があります。
また、ジョンが愛用するワウペダル、アイバニーズのWH10との相性も非常に良く、粘りのあるパワフルな歪み。
Ibanez WH10
つぎは、ジョンの音作りで重要なエフェクター、WH10。
この型番は絶版で今となってはレアな存在ですが、WH10V3という名称で復刻されており、ややオリジナルよりもハイファイなニュアンスですが、目指す方向は近く価格的にも買っておいて損はないと思います。
WH10の最大の特徴は、超サイケデリックなところ。周波数帯域のフィルター可変幅が広く、効果の掛かり具合が猛烈なのです。
そのため、ワウペダルを上下した際のトップとボトムのサウンドが、クライベイビーやVOXのワウ・ペダルにはないサイケデリックな香りがあります。
ジョンはソロでも勿論多用していますが、「バイ・ザ・ウェイ」のブラッシングでは踏み込んだ状態をキープして、高音域を強調した状態で使用するなど、多岐にわたりこのワウを愛用しています。
また、歪みエフェクターとの相性が良く、音が太く力強いワウサウンドに仕上がります。
WH10はプラスチックの筐体でチープな作りです。初期のグレー・ボディと後期のブラック・ボディがあり、初期と後期でもサウンドがやや異なります。復刻されたWH10V3はアルミを使用した頑丈な筐体にアップグレードされました。
オリジナルと復刻のサウンドの違いは、オリジナルが気持ちメロウなのに対し、復刻はハイファイな印象になっています。目指す方向は同じなのですが、復刻の方は、トゥルーバイパスが追加されているので、原音を崩さず忠実に出力する印象ですね。
ジョンはモンスターケーブル
ちなみに、ジョン・フルシアンテはモンスター・ケーブルを使用しています。ギターとアンプ(エフェクターも)を繋ぐシールド・ケーブルも当然侮れません。シールド・ケーブルを変えるだけで音は見違えるほど変わるので、試す価値はあります。
ジョンの歴代エフェクター
こちらに「ジョン・フルシアンテ使用エフェクター【効果別で整理・解説】」を詳細にまとめていますので、ぜひお役立てください。
核となるエフェクターは、ここでも紹介したDS-2、WH10、CE-1ですが、ほかにも色々使用しています。
4.まとめ
ジョン・フルシアンテは素材の音を大事にしている。
たとえば、ジョンのソロ「Shadows Collide with People」に収録されている「Second Walk」での特徴的な歪んだギターサウンドはアンプ直だそうです。
素材を大事に音作りをしている好例だと思います。
ジョン・フルシアンテの音作りは繊細な感情表現を可能にします。
※下記からジョン・フルシアンテ特集号も読めますのであわせてどうぞ。
今日は以上です。
skでした。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
記事が参考になりましたら幸いです。
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You are My Hero, Rest in Peace Taylor Hawkins.
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